地震のとき、足の悪い家族をどう守る?「抱えて逃げる」前に考えたい備え
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大切な人と、一緒に考える地震への備え
「そのときは、私が抱えていくよ」
そう答えた私に、妻は言いました。
「あなたも、腰を痛めたことがあるでしょう」
私は、返す言葉がありませんでした。大切な家族を守りたい。その気持ちがあるから、いざとなれば何とかできる。ずっと、そう思っていたのです。
私は62歳。妻と2人で暮らしています。妻は足に痛みがあり、外では杖を使います。料理も、庭の鉢の世話も自分でしています。ただ、急いで歩いたり、段差を越えたりすることは苦手です。
普段は妻の歩く速さに合わせれば、大きな困りごとはありませんでした。けれど、地震のときも同じように動けるのでしょうか。玄関の前で交わした会話が、私たちの備えを見直すきっかけになりました。
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「私が助ける」の中に、確かめていないことがあった
買い物から帰った日、妻は玄関の前で少し休みました。私が荷物を置いて待っていると、妻が段差を見ながら言いました。
「地震で急いで出るとき、ここを越えられるかな」
私は、考えるより先に「抱えていくよ」と答えました。でも、妻に腰のことを言われて思い出しました。重い荷物を持ったあと、腰が痛んだ日。手すりにつかまりながら階段を下りた日。
自分の体には、できることと難しいことがある。それを知っていたはずなのに、妻を守る場面だけは、何でもできるつもりでいたのです。
その夜、私は紙に、寝室から玄関までの道を書きました。寝室の扉、廊下の棚、玄関の段差。いつも通っている場所を線でつなぐと、今まで考えていなかったことが浮かんできました。
私が横にいれば、声をかけられます。でも、外出している時間もあります。自分もけがをしたら、どうするのでしょう。「私が助ける」という言葉の中には、私が無事で、家にいて、動けるという前提がありました。
妻の声を聞き、寝室から玄関までを見直す
紙を妻に見せると、こんな言葉が返ってきました。
「私にも、考えさせて。私の足のことだから」
私は、妻のために考えているつもりで、妻の代わりに全部決めようとしていました。普段どこで困るのか、何があれば動きやすいのか。まず聞く相手は、妻自身でした。
翌日の昼、2人で家の中を見て回りました。危ない動きを試すのではなく、いつもの歩き方で困る場所を探します。寝室の扉のそばには背の高い棚。廊下には、あとで片づけようと思っていた箱。妻はその箱をよけて歩いていました。
何も起きていない今でも、通りにくい。地震で物が落ちたら、どうなるのでしょう。私は箱を片づけ、棚の置き場所を見直しました。寝るところや出入りする道へ家具が倒れないよう、固定方法も確かめました。
助け方を考える前に、困る物を減らす。大がかりな準備を待たなくても、今日できることがありました。家具の置き方や固定は、東京消防庁の自宅の家具転対策も参考になります。
家族だけで抱えず、地域と使える計画を考える
私は地域の相談窓口に連絡しました。何を聞けばよいか迷いましたが、妻の歩き方、玄関の段差、私がいない時間のことを、そのまま話しました。
そこで知ったのが、個別避難計画という仕組みです。支援が必要な方について、避難先や支援する人、避難の方法などを具体的に考える計画です。対象や作成の進め方は、お住まいの自治体に相談できます。参考:内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援」
名前を登録すれば、必ず迎えが来る。そう考えるのでなく、誰が、どんなときに手を貸せるのか。どこへ、どう移るのか。私たちの地域で使える支援は何か。暮らしに合う計画を相談していくことが必要なのだと思いました。
妻と近所の方にも話をしました。「何かあったらお願いします」だけでは、何を頼みたいのか伝わりません。まず、お互いの身が安全であること。そのうえで声をかけられるか、できることと難しいことを話しました。
昼なら助けられても、夜は分からない。仕事で留守の日もある。それを聞いて、私はむしろ安心しました。できないことが分かれば、別の備えを考えられるからです。
一人の善意に、全部を預けない。
家族にも地域にも無理をさせないために、頼れる場面と頼れない場面を、今のうちに話しておくことにしました。
本人が見つけられて、手を伸ばせる備えにする
玄関へ戻ると、妻が杖を手に言いました。「いつも使っているものが、近くにあると助かる」
寝室では杖をどこに置くか。床に物が散らかったとき、足を守る物はあるか。眼鏡や必要な薬の情報は、すぐに分かるか。私は妻の話を聞きながら、置き場所を決めました。
備えの置き場所を、本人と一緒に考える
- いつもの杖や眼鏡を、自分で見つけられるか。
- 必要な物に、無理なく手を伸ばせるか。
- 薬の情報や連絡先の場所を、人に説明できるか。
- 持ち出す荷物を、誰がどう運ぶか。
私だけが場所を知っていても、使える備えにはなりません。妻が自分で見つけられること、手に取れること、人に伝えられること。その一つひとつを確かめました。
妻は持ち出す物を自分で選びました。私は重い物を分け、持ち方を見直しました。全部を私が決め、全部を私が運ぶという考えから、少しずつ離れていきました。
眠っているとき、すぐ動けるだろうか
昼の玄関なら、話す時間も考える余裕もあります。でも、眠っているときに大きく揺れたら、どうでしょう。
妻を立たせて、すぐ外へ連れ出す。それが本当にできるとは思えませんでした。私自身も、揺れる床で動けるか分からないのです。
まず身の安全を守る。大きく揺れている間に慌てて動かない。私は消防の案内を妻と読み、急いで走れることを前提にしないようにしました。
寝ている場所に何が倒れてくるのか、何が落ちてくるのか。揺れがおさまったあとに、どう動くのか。寝床と通り道の両方を見直していくうちに、寝る場所そのものに迎える備えにも目が向きました。
逃げ足の速さだけに頼らない、寝床の備え
そこで知ったのが、耐震シェルターベッド「鉄の間(TETUNOMA)」です。寝室に置いて、普段はベッドとして使う。写真を妻と見ながら、いつもの寝床に備えを持つ暮らしを考えました。
TETUNOMAは、強固な鉄の構造で寝床の空間を守ることを目指した家具です。耐荷重試験では、大型油圧試験機で上から荷重をかけ、最大131.7トンを記録しました。眠る場所にも、命を守る可能性を高めるための備えを持てるように、強度と構造を追求しています。
静岡県内の制度対象市町や三重県伊勢市では、補助対象製品として認められています。制度の利用には、住宅や申請などの条件があります。
写真を見ていた妻が言いました。「毎晩使うものなら、部屋になじむのがいいね」
私はその言葉で、普段の暮らしにも目を向けました。防災について考えるときも、毎日の心地よさは大切です。いつもの寝具を整え、寝る前にくつろぐ。そんな時間を過ごす部屋に、備えを持つ姿を想像しました。
寝室の備えを考えながら、地域への支援の相談も続けます。火災や津波などの危険があるときには、安全な場所への避難が必要です。家の中を整えること、支援を相談すること、寝床に備えを持つこと。それぞれを重ねて、私たちが使える選択肢を増やしていきたいと思いました。
「何とかする」から、一緒に考える備えへ
数日後、また2人で買い物に出ました。玄関で、私は妻の歩く速さを待ちました。前と同じ場所、前と同じ段差です。けれど、私の返事は変わりました。
「ここは、どうしたら動きやすいかな」
妻も、考えたことを話してくれました。私が一人で決めるよりも、2人で話す方が、普段の暮らしに合う備えが見えてきます。
家族を守りたい。その気持ちは変わりません。だからこそ、本人の声を聞く。寝室から玄関までの道を確かめる。自分がいないときや動けないときのことも、地域に相談する。
今、大切な人と一緒に、寝る場所から玄関までを考えてみませんか。いつもの道の中に、今日から変えられることが見つかるかもしれません。
記事の内容について
登場人物、会話、出来事はフィクションであり、実際に被災した方や購入者の体験談ではありません。物語に登場する年齢や生活の描写は、現実の暮らしにできる限り近づけて構成しています。写真は製品の使用イメージです。耐荷重131.7トンなどの製品情報は実際の公表内容に基づいており、物語上の創作値ではありません。
