耐震シェルターは「見た目が無理」で終わっていい?──防災とデザインの両立が当たり前になった時代に、寝室に置くものを考え直す
Share
この記事でわかること
- 耐震シェルターのデメリットとして「圧迫感」「見た目」が多く挙げられる
- 防災グッズは「日常に溶け込むデザイン」が主流になりつつある
- グッドデザイン賞を受賞した防災プロダクトが増えている
- 「形態は機能に従う」──機能を突き詰めた形には、合理的な美しさが宿る
「耐震シェルターって、あの鉄の檻みたいなやつでしょ?」
「あれは、ちょっと無理」
正直に言って、多くの人がそう思っています。
リビングに鉄骨の箱。
寝室にむき出しの金属フレーム。
いくら命を守るためとはいえ、毎日の暮らしの中に「防災感丸出し」の構造物を置くことに抵抗があるのは、自然な感情です。
しかし、「見た目が嫌だから」で防災をやめてしまっていいのでしょうか。
この記事では、防災とデザインの関係を考え直します。
耐震シェルターに対する「見た目」の不満
耐震シェルターのデメリットとして、繰り返し指摘されるのが以下の点です。
- 圧迫感・閉塞感がある
- 部屋のインテリアに合わない
- 日当たりや風通しが悪くなる
(参考:トキワシステム 耐震シェルターの3つのメリット・4つのデメリット)
(参考:耐震シェルターのデメリット5選)
特に部屋型シェルターは、壁・床・天井を鋼材で囲む構造のため、部屋の雰囲気が大きく変わります。
工事期間も1〜2週間かかり、部屋が「シェルター化」されることで日常空間の快適さが損なわれるという声は少なくありません。
テーブル型シェルターはインテリアとの調和を重視した製品もありますが、耐荷重は約30トン程度と、部屋型やベッド型に比べて防護性能には差があります。
つまり、多くの耐震シェルターは「安全性」と「日常の快適さ」のトレードオフを抱えているのが現状です。
防災グッズのデザインは、もう変わっている
一方で、防災の世界では大きなデザイン革新が起きています。
「防災は我慢するもの」から「防災は暮らしに溶け込むもの」へ。
この流れを象徴するのが、グッドデザイン賞を受賞した防災プロダクトの数々です。
無印良品「いつものもしも」シリーズは、2020年にグッドフォーカス賞(防災・復興デザイン)を受賞。
「常時携帯」「持ち出し」「家に備える」の3段階で、日常生活にそのまま取り入れられる防災セットを実現しました。
(出典:良品計画 グッドフォーカス賞受賞)
NOSIGNER監修「THE SECOND AID」は、救急箱をイメージした美しいパッケージの防災キット。
iFデザイン賞やレッド・ドット・デザイン賞を受賞し、**「見せ置きしたくなる防災グッズ」**という新しい価値を生みました。
(参考:デザインマガジン おしゃれな防災グッズ)
**災害備蓄スタンド「BISTA」は、ロビーやエントランスなど人が行き交う空間に「あえて置く」**デザインで、グッドデザイン賞を受賞しています。
(出典:グッドデザイン賞事務局 災害に備えるためのグッドデザイン)
防災は、デザインで変わる。
「我慢して置くもの」ではなく、「暮らしの中に自然にあるもの」へ。
この転換は、もう始まっています。
「形態は機能に従う」という普遍の原則
ここで、デザインの世界でもっとも有名な原則のひとつを紹介します。
"Form follows function"(形態は機能に従う)。
20世紀初頭にアメリカの建築家ルイス・サリヴァンが提唱した言葉です。
意味はシンプル。
機能を突き詰めた形には、必然的に美しさが宿る。
装飾のための装飾ではなく、「なぜその形なのか」に合理的な理由がある形。
それこそが、時代を超えて愛されるデザインの条件だという考え方です。
この原則に従えば、防災プロダクトのデザインはこう評価されるべきです。
「おしゃれかどうか」ではなく、「その形に、命を守る合理性があるかどうか」。
寝室に置く家具に、何を求めるか
ここで、改めて考えてみてください。
あなたの寝室にあるベッドフレーム。
そのデザインを選んだ基準は何でしたか。
色? 素材? 部屋との調和?
どれも大切なことです。
しかし、もうひとつ加えるべき基準があるとしたら。
「この上で寝ているとき、地震が来たら命を守れるか」
寝室は、1日の3分の1を過ごす場所です。
そして、地震の犠牲者の86.6%が自宅で亡くなっている場所です。
(出典:内閣府 阪神・淡路大震災教訓情報資料集)
デザインを捨てて安全を選ぶか。
安全を諦めてデザインを選ぶか。
本当に、この二択しかないのでしょうか。
「ベッドである」という合理性 ── TETUNOMA(鉄の間)
日心製作株式会社の耐震シェルターベッドTETUNOMA(鉄の間)は、その名の通り「ベッド」です。
部屋の中に鉄の檻を置くのではありません。
シェルターの上にマットレスを敷いて、ふだんのベッドとして眠る。
揺れを感じたら、ベッドの下に潜り込む。
上から下へ、約6秒。
見た目は、寝室にあるベッドフレーム。
中身は、建築構造用鋼材で作られた耐荷重120トン超の防護構造。
部屋型シェルターのように壁や天井を囲いません。
日当たりも、風通しも、そのまま。
テーブル型のように「リビングのテーブルの下に潜る」構造でもありません。
就寝中──もっとも無防備な時間に、もっとも近い場所で守る。
これがTETUNOMAの設計思想です。
「シェルターを寝室に置く」のではなく、「寝室のベッドがシェルターになる」。
この違いは、デザインの観点からも大きな意味を持ちます。
従来のシェルターが抱えていた「防災感」「圧迫感」「インテリアとの不調和」。
TETUNOMAは、ベッドフレームという日常家具の形をとることで、それらを構造的に解消しています。
機能を突き詰めた結果、「ベッドの形」に至った。
Form follows function──形態は機能に従う。
「見た目が無理だから」で防災を諦める必要は、もうありません。
