妊婦・子育て世帯の地震対策、避難所に行けない現実とその備え方

妊婦・子育て世帯の地震対策、避難所に行けない現実とその備え方

この記事でわかること

  • 妊婦が地震で直面する特有のリスク
  • 赤ちゃん連れが避難所で居場所を失う理由
  • 車中泊避難に潜むエコノミークラス症候群の危険
  • 子育て世帯にとっての在宅避難と就寝中の安全

妊婦は災害時の「要配慮者」

内閣府の防災ガイドラインでは、妊婦は災害時に特別な支援が必要な「要配慮者」に位置づけられています。

妊娠中、特に中期から後期の方は、足元が見えにくく、しゃがむことが難しく、とっさに素早く動くことができません。
地震の揺れの中で身を守る動作ひとつをとっても、一般の方とはまったく条件が異なります。

しかし、要配慮者であることと、実際に配慮を受けられることは、別の話です。

大規模災害が起きたとき、避難所は大勢の被災者であふれます。
妊婦であることを申し出ても、優先的にスペースを確保してもらえる保証はありません。

それどころか、妊婦や乳幼児を連れた家庭は、避難所そのものに居づらさを感じ、早々に出てしまうケースが多いのです。

愛知県が作成した「妊産婦・乳幼児を守る災害時ガイドライン」では、妊婦が注意すべきリスクとして、冷えによるお腹の張り、妊娠高血圧症候群、切迫流早産が挙げられています。
これらはいずれも、ストレスや睡眠不足、栄養の偏りによって悪化する症状です。
つまり、避難生活そのものが妊娠のリスク因子になるのです。


避難所で「居場所がない」という現実

東京都が作成した「子どもを守る災害対策検討会」の報告書には、過去の震災で子育て世帯が避難所で経験した困難が記録されています。


泣き声という「壁」

赤ちゃんは泣きます。
これは生理現象であり、止めることはできません。

しかし避難所は、大勢の被災者が極度のストレスの中で過ごす空間です。
赤ちゃんの泣き声が周囲の方の睡眠を妨げ、苛立ちの原因になることがあります。

実際の体験談では、泣き声を気にして避難所の隅で過ごしたり、周囲からの視線に耐えられなくなって避難所を出たという声が報告されています。

授乳とおむつ替えの場所がない

多くの避難所には、授乳やおむつ替えのための個室やスペースが用意されていません。
体育館の一角で人目を気にしながら授乳する。
衛生状態の悪い環境でおむつを替える。

こうした状況が、母親の精神的な負担をさらに大きくします。

物資の偏り

ミルク、離乳食、おむつといった乳幼児向けの物資は、一般の支援物資に比べて届くのが遅れる傾向にあります。
母乳で育てている方でも、災害時の極度のストレスや疲労で母乳が出にくくなるケースがあります。

液体ミルクは近年普及が進みましたが、避難所の備蓄に含まれていない自治体もまだ多いのが現状です。

こうした現実を受けて、内閣府は「あかちゃんとママを守る防災ノート」を作成し、妊産婦や乳幼児のいる家庭に向けた防災準備の啓発を行っています。
しかし、準備をしていても避難所の環境そのものが変わらなければ、根本的な解決にはなりません。

赤ちゃん連れで避難所に行った方の中には、必要な物資だけ受け取って車中泊に切り替えたという報告も少なくありません。
避難所は「行けば安心」という場所ではなく、子育て世帯にとっては「行っても居られない」場所になり得るのです。


車中泊という「次善策」の危険

避難所に居づらいと感じた子育て世帯の多くは、車での避難を選びます。
赤ちゃんが泣いても周囲に迷惑をかけない。
プライバシーも確保できる。
一見すると合理的な選択に思えます。

しかし、車中泊避難には深刻なリスクが潜んでいます。

エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)です。

長時間同じ姿勢で座り続けることで、足の静脈に血栓ができ、それが肺に飛ぶと命に関わります。

新潟県中越地震では、車中泊をしていた方のうち14件の肺塞栓症による入院が確認され、そのうち7人が亡くなっています。
東日本大震災でも、車中泊者を対象にした調査で約3割に足の静脈血栓が見つかりました。

そして、妊婦はこのエコノミークラス症候群のリスクが通常より高いことがわかっています。
妊娠中はもともと血液が固まりやすい状態にあるためです。

避難所にもいられない、車中泊も危険。
子育て世帯にとって、災害時の選択肢は想像以上に限られているのです。


災害は妊娠そのものにも影響する

災害のストレスは、妊娠の経過にも直接影響を及ぼします。

日本助産学会誌に掲載された系統的文献レビューによると、東日本大震災後で早産率の増加が、低出生体重児率の増加が報告されています。

特に妊娠初期に被災した場合、在胎週数や出生体重が減少する傾向が強く現れていました。

これは「母体のストレスが胎児に伝わる」というメカニズムです。
避難生活の不安、睡眠不足、栄養の偏り、冷え。
こうした環境が重なることで、早産や低出生体重のリスクが高まります。

地震そのもので命を落とさなくても、その後の環境が妊娠に悪影響を与える。
災害関連死とはまた違う形で、命の連鎖がおびやかされるのです。


子育て世帯にとっての「在宅避難」

こうした現実を踏まえると、子育て世帯にとって最も安全な選択肢は、可能な限り自宅で過ごすことです。

赤ちゃんにとっても、慣れた環境で過ごせることは大きな安心材料です。
哺乳瓶、おむつ、着替えなど必要なものが手の届く場所にある。
授乳もおむつ替えも、人目を気にせずできる。

ただし、在宅避難を選択するためには、大前提があります。

自宅が倒壊していないこと。
そして、就寝中の安全が確保されていること。

寝室こそが最大のリスクポイント

赤ちゃんや小さな子どもは、1日の大半を寝て過ごします。
地震がいつ来るかは誰にも予測できません。

寝室に背の高い家具はないでしょうか。
タンスや本棚が、ベビーベッドの近くに置かれていないでしょうか。

消費者庁のデータでは、0〜1歳児のベッドからの転落事故が5年間で912件報告されています。
これは平常時の数字です。
震度7の揺れの中では、家具の転倒やベッドの移動が加わり、危険は何倍にも膨らみます。

子どもの寝ている場所の安全を確保すること。
それが、子育て世帯の地震対策の出発点です。


親が生きていなければ、子どもは守れない

ここまで、子どもや赤ちゃんのリスクに焦点を当ててきました。
しかし、もうひとつ忘れてはならない視点があります。

親自身の安全です。


阪神・淡路大震災は午前5時46分に発生しました。
死亡者の78.9%が自宅で亡くなり、死因の77.0%が窒息・圧死でした。

子どもを守るためには、まず親が無事でなければなりません。
就寝中に建物が崩れたとき、親が動けない状態では、隣で寝ている赤ちゃんを助け出すこともできないのです。

備蓄も、避難計画も、防災アプリも、すべては「親が生きている」ことが前提です。
その前提を確保する対策が、一番最初に必要なのではないでしょうか。

特に夜間の地震では、親も子どもも同じ家の中で寝ています。
建物が倒壊すれば、親子もろとも下敷きになる可能性があります。

日中であれば、大人は揺れを感じた瞬間に子どもを抱えて安全な場所に移動できるかもしれません。
しかし深い睡眠の中では、体が反応するまでに数秒かかります。
その数秒の間に、天井や家具が落ちてきたら。

子育て世帯の地震対策は、「避難所で何を食べるか」の前に、「地震の瞬間、家族全員が生き延びられるか」から始めるべきです。


寝室の安全が、家族全員を守る第一歩

TETUNOMA(鉄の間)は、就寝スペースそのものを耐震シェルターに変える製品です。


普段はベッドの上で普通に眠り、地震が起きたら下の空間に約6秒で避難します。
120トン以上の荷重に耐える鉄鋼フレームが、倒壊した建物の下でも生存空間を確保します。


下段のスペースは、敷布団を敷いて二段ベッドのように使うこともできます。
お子さんと親が上下に分かれて寝ることで、日常の就寝スペースがそのまま家族の避難空間になります。


避難所に行けなくても、車中泊のリスクを背負わなくても、自宅で安全に眠れる環境がある。



それは、妊婦さんや小さなお子さんのいるご家庭にとって、何よりも心強い備えではないでしょうか。



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